チャルディーニ流、騙されない心理学。「影響力の武器」を要約。

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"ダークサイドの心理学"「影響力の武器」とは何か

影響力の武器」とは、人間の本能に基づいた心理学的テクニック。世界中のセールスマンマーケターはもちろん、詐欺師にまで大きな影響を与えている理論です。これを提唱したのは心理学者のロバート・B・チャルディーニ。心理学が積み上げてきた知見を、著書「影響力の武器」にまとめ上げました。この理論は、交渉を成功させるための"攻撃的"な利用法だけではなく、あなたを騙そうとしている人々から身を守る"防衛策"としても有意義です。自動車のディーラーから、デパートの無料サンプルまで…私たちの身の回りに潜む「影響力の武器」の数々をお見せしましょう。

6つの「影響力の武器」

返報性(reciprocation)

スーパーやデパートでの試食や無料サンプル。これが最初の「影響力の武器」のひとつ、「返報性」を利用したテクニックの代表格。「返報性」は、「無料でモノをもらうとそれ以上のものを返したくなる」という人間の心理に基づいています。皆さんも覚えがあるのではないでしょうか。「無料サンプルをもらったときの罪悪感」や、「急にお店に好感を抱く感覚」。無料サンプルを配っている人々は何も、ボランティアでやっているのではなく。あくまで、人間の心理を利用して利潤を最大化させているだけなのです。顧客からすれば、「無料より高いものはない」ということでしょうか。

コミットメントと一貫性(commitment and consistency)

2つ目のテクニックは、「コミットメントと一貫性」。これは、人間の習性と同時に、社会的な「美徳」を利用したもの。人間には、「一つのことをやり遂げることは素晴らしい」という価値観がありますよね。それに付け込んでいくイヤらしい交渉術です。

例えば、その代表格のひとつ「フット・イン・ザ・ドア(foot in the door)」。これは、交渉相手に「小さな頼み事から呑ませていく」手法です。具体的には、最初は本当に承認を得やすいリクエストをします。まずは、「100円の商品を買いませんか」レベルから。ただ挨拶する程度でも効果があるとか。そうして相手を自分の土俵に引きずり込んでいき、最終的には「1万円の商品」を売り付ける。うーん、怖い。これは知らない間にやられてしまいそうな、最も強力なテクニックのひとつですね。

もう一つ有名なのが、「ロー・ボール・テクニック(the low-ball)」。これは、自動車のディーラーがよく使うことで有名。交渉の序盤には「都合の悪い事実」を隠しておいて、いよいよ大詰めを迎えたときに「ひっくり返す」。例えば、車の価格見積もりが200万円だったのに、最後の最後で"計算間違い"が発覚して210万円になるなど、芝居じみた交渉もあるみたいです。でも、往々にして顧客は後には引きづらい。人間の心理をうまく逆手に取ってますね。

社会的証明(social proof)

社会的証明」は、「人々は多数派の意見に従いがち」という原理。この現象が最も起こりやすいのは、2つのパターンがあります。1つ目のパターンは、「不確実性(uncertainty)」。例えば、初心者に対して「この商品が一番売れてます!」と表示したりするなど。これに関しては、大抵の場合は多数の意見に従った方がいい結果になることは否定できません。それでも、人間が考えることをやめてしまい、盲目的に多数の意見を支持し始める時には悲劇的な結末が待っているかもしれません。2つ目のパターンは、「類似性(similarity)」。自分に似た環境に置かれた人物が起こした行動に追従したくなる原理です。凶悪犯罪者は、新聞やテレビの報道にインスパイアされて犯行に及ぶことが多いといいますよね。これも、「類似性」が引き起こす現象の一つ。

好意(liking)

やたら褒めてくるセールスマンには注意が必要かも。なぜなら、「お世辞(compliments)」は人を従わせるための心理学的なテクニックだからです。基本的に、人間は好意を抱いた人に対しては従順になる傾向があります。好意を抱かせる要素は「お世辞」の他にも、「外見(physical attractiveness)」、「共通点(similarity)」、「接触と協力(contact and cooperation)」など。「外見」が整っていると「知性」や「性格」など、全く関係ない要素も高く評価されやすく、また、「共通点」や「接触や協力」の数が多いほどその人を信用しやすくなります。出身地など、やたら「共通点」を強調してくるのは少し怪しいと思った方がいいかもですね。

権威(authority)

権威」も強力です。「○○大学教授推薦」とか、「○○病院院長監修」等の名のついた商品は沢山目にしますよね。これらは典型的な「権威」を用いたマーケティングの手法。もちろん、実力のある方が監修した製品に信頼を置くことは自然なこと。しかし同時に、「『権威』の力が自分に働いている」ことを自覚することで冷静に判断ができるのも事実です。

希少性(scarcity)

最後は、「希少性」。人々が「フェラーリ」や「ポルシェ」に乗りたがる理由は、これで説明できますよね。「数量の希少性」です。みんなが持っていないものを欲しい。この感情は人間の根底にあります。あとは、「時間の希少性」。「季節限定フレーバー」や「タイムセール」など。「今しか買えない!」と感じさせることで、消費者の行動を簡単に変化させることができるんです。

「影響力の武器」を学ぶ意義

「影響力の武器」を学ぶことは、僕たちを"詐欺師"たちから守ること。実際に「影響力の武器」を行使されているとき、そのことに気付くのは難しかったりします。ですから、"詐欺師"たちに出会う前に、彼らの使うテクニックについて熟知しておくことが不可欠になります。また、「影響力の武器」は"攻撃的"にも使えます。しかし、それは同時に信頼を失う原因になるかもしれません。人を騙すためにこのテクニックを使うのではなく、「人間関係をスムーズにするために『影響力の武器』を理解する」程度に留めておくのが賢明かもですね。あくまでご自身の身を守る「防衛手段」として理解していただけたらなと思います。

ロバート・B・チャルディーニ(著)社会行動研究会(訳)

Photo by JoelValve

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